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短編小説 -夢であえたらー



「夢であえたら」


電車の窓に寄りかかり、外の風景を見るともなしに眺めていると

そこに自分の顔が2重露出されたように重なって見える。

なんとも、情けない顔だ。

なぜ、ぼくはあの場所へ向かっているのだろう。

あの手紙を信じたから、いや信じている分けではない。

とても信じられる手紙の内容ではない、でも悪戯にしては大して面白くもない。



時計をみるともう夜の9時を過ぎている

とりあえず今日は何処かに泊まらなくては・・・・

駅を出るとまだ10時過ぎだというのに、全く人の姿はなかった。

ただ1つロータリーの反対側に「旅館」という薄暗い電灯に照らされた看板が見えた。

選択する余地もなくその看板に向かって行った。


そして次ぎの日、冴えない旅館で僕は目を覚ました。

旅館のありきたりの朝食を済ませ、直ぐにあそこへ向かうことにした。

旅館の主人に住所を尋ねると、30分以上は掛かるが歩いて行けない距離ではないということだ。

簡単な地図を書いてもらい、僕は歩いて行くことにした。

昨日は夜中だったので気が付かなかったが、全く何もない駅だ、僕が泊まった旅館と小さなスーパーだけ

地図の通り10分ほど歩いていくと、もう何もなかった、ただ一本道が続いてるだけ、

道の両脇は畑と林だけ、こんな所に家があるのだろうか、

そういえば、手紙には住所が書いてあったのだが、

それが家の住所だというのは自分の思い込みだったのかもしれない


しばらく一本道は続いた、そしてバスの停留所らしき建物がみえてきた。

バスを待つ人のための雨や日差しを避けるための簡単な小屋だ。


最初は気が付かなかったが、その小屋に誰かがいる。

近づいていくと、それが小さい女の子ということが分かってきた。


まてよ、ちょっとまって。

この風景、バス停、女の子、

これって僕が良く見る夢じゃないか。

ということは、これも夢なのか。

とにかく、あの女の子に会おう、そして手紙のことを聞こう。

これが夢でも夢じゃなくても、聞きたい事はたくさんある。


僕は早足でバス停に向かっていった、でも転ばないように慎重に歩いた。

これがもし夢だったら転んだり、躓いたりしたら、きっと夢から覚めてしまうような気がしたからだ


そしてなんとか何事もなくバス停の到着した。

女の子を見た。

その子はぼくをみて、二コリと微笑んだ。

「ほんとに来てくれたんだ 」

「あの手紙を出したのは君なの?」

「うん、そうだよ でもホントに来てくれるとは思っていなかった」

「これって夢の中なの?」

「夢? 私にはどっちでもいいことなの」

「どっちでもいいって やっぱりこれは僕の夢の中」

「ん~、私の夢の中でもあるんだけどね」

「えーっと、それでなんで僕を呼んだの」

「まぁまぁ そんなに焦らないで、ここに座って」

僕は彼女の隣に座った。 

座って彼女の横顔をみると

今まで少女だと思っていた彼女は自分と同じくらいの歳になっていた。

「君はだれなの?」

「わぁー 夢の中で私が何者かって聞かれたの初めて!」

「とにかく僕に手紙だしたでしょ」

「どうやって出したの」

この質問て絶対に奇妙だ、僕の夢の中でどうやってもなにもない

僕の夢なんだから。

「へんな質問だよね、これは僕の夢なんだから、僕が想像したってことだよね」

「まだ分かってないのね、これは私の夢でもあるの」

「だから私が手紙を出したの、あなたの想像ではないは」

「ではどうやって手紙を・・・」

彼女はにっこり微笑んで道の反対側を指差した。

ポスト!、今まで気が付かなかった なんでこんなところにポストがあるんだ。

「あそこに投函したの」

「ということは、君の夢の中で君が手紙を書いて、あのポストに入れると僕の夢に届くってこと?」

「私もよく分からないけど、なんとなくそんな気がしたの」

「でも、あなたとお話できて嬉しかった。」

「あなたはいつも、遠くから私のことを見てるだけで、ここまでこなかったの」

「私が近づこうとすると貴方は消えてしまうし」

「だから、手紙を書いたの、お話したいって」


「それを僕が受け取ってここにいるというわけか・・・」

妙に納得してしまう話のようなきがしてきた。

「それで君は・・・」

その時、土埃をあげながらバスがやってきた。

「じゃ、私はいくね」

と言い残し彼女はバスに乗り込んだ。

バスの一番後ろの席で手を振る彼女が見えた。

そして通りの向こうにあったはずのポスト消えていた。


ぼくは自分の部屋のベットで目を覚ました。

やっぱり夢だったんだ。 あの手紙もあの彼女も全て僕の夢ということか・・・


その後暫くあのバス停の夢は見なくなっていた。

そしてある日、一枚の手紙がポストに入っていた

手にとってみると差出人の名前はなく

裏をみると「ありがとう」っと一言だけ書かれていた。

そしてもう一度、表をみて、気が付いた

忘れもしない、あのバス停の住所の住所の消印が押してある。

ということはこれも・・・・









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